神戸学院大学集中講義「食物危機管理論」(12月27日~29日)

<主題> 日本は世界有数の長寿国となり、日本食は健康食として知られている。しかし、「現代の」という言葉をつけた「現代の日本食および食環境」はどうだろうか。食生活の不均衡からメタボリックシンドロームが蔓延し、生活習慣の乱れによって小学生から社会人の朝食欠食の割合が多くなり、若い女性においては極度の痩せの割合が年々増加している。さらには、企業による表示偽装や期限切れ食品の利用、健康情報番組によるデータねつ造問題、鳥インフルエンザやBSEなど、食の安全・安心が脅かされているのが「現代の日本食および食環境」ではないだろうか。この講義では、まさに現代の食環境の問題点について情報を収集・分析し、地域や社会における解決策を議論・提案できる能力を養うことを主たる目的とする。また、平成23年3月11日、東日本大震災を経験した私たち日本人は、極寒の東北における命をつなぐための食の大切さ、避難所をはじめとする乳幼児・高齢者・医療・介護が必要な方の食の大切さ、そして、放射能汚染への対応や風評被害など、これまで以上に「食の大切さ」を知る機会となった。今後は、多方面の科学研究者が多くの議論を重ねながら、人類が経験したことのない処理が必要となる。これからの社会を生きていく私たちは、国(政府)、自治体、企業、大学(研究者)、市民のそれぞれの立場で実施できる(実施すべき)ことは何か、を考えていくことが大切であろう。最終的に、私たちの心と体の健康は、健全な「食環境」の上に成り立つことを再確認し、生きる上での基本である「食」を見直し、知育、徳育及び体育の基礎となる「食育」をキーワードとして、最新の栄養学研究を紹介するとともに、学校、家庭、病院、地域における実践活動を紹介する。 なお、講義を行う時点でも状況が時々刻々と変化しているため、各省庁から発信されている最新情報による講義を行うことを心がける。<目標> 全ての世代に対応出来る「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得することが出来る。防災や社会貢献における「食」の大切さを再認識する。適切な情報収集による食のリスク管理と同時に、食による生活の質(QOL)の向上について学び、今後の生活に活かすことが出来る。健全な食生活からの「地域や社会の健康づくり」について考えることが出来る。第1回食物危機管理論~概論~保健、医療、福祉、介護、教育、環境、社会、情報などの問題と深く関わる「食」を見つめる。第2回健康と食(1)~食物・人間・環境~現代の健康問題(保健・医療・福祉・介護の現場等)の現状・問題点とそれらに関わる「食」を取り上げる。第3回健康と食(2)~人体の不思議~人間のからだとこころの健康について考え、「食」の役割について考察する。第4回食の情報「食」に関する情報倫理的な問題を取り上げるとともに、食と健康の情報解析の手法を習得する。第5回食と遺伝子最先端医療研究として行われる遺伝子診断と「食」に関わる課題を取り上げる。第6回食の安全(1)~安定供給~現代の日本における「食」が安定供給されているのか、食料自給率や日本の農業の現状について情報を提供する。第7回食の安全(2)~安全な食を求めて~現代の日本における「食」は安全なのか、また、安全な「食」とはどのようなものか、考察する。第8回食の安全・安心(1)~トピックス~鳥インフルエンザ、BSE、情報番組ねつ造問題などフード・ファディズムの問題を取り上げる。第9回食の安全・安心(2)~放射能~放射能と食について情報を提供する。第10回災害時の食災害時の食の大切さ、対策方法等について情報を提供する。第11回健全な食環境を目指して~食育の重要性~「食育基本法」及び「食育推進基本計画」について、背景、目的、内容、現状を解説する。第12回食育の現状と実践~学校・家庭・地域~保育所・幼稚園・小学校・中学校・家庭・地域社会などにおける食育実践を紹介する。第13回食物危機管理論~意見交換~この講義を通して得た「食」と「健康」に関する課題解決能力を活かし、今後の国、行政、地域、個人における「健全な食環境づくり」とはどのようなものか議論し、出来るだけ多くの解決策を出し合う。第14回食物危機管理論~考察とまとめ~食と健康と環境をテーマに、社会に貢献できる知識と能力を養うための考察とまとめを実施する。第15回食物危機管理論~意見交換・内容の補完~意見交換を実施する。最新のデータや状況について補完を行う。
Takanori NOGUCHI, PhD

Takanori NOGUCHI, PhD

毎日出会う食と旅日記

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